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【がん消滅の罠】完全寛解の謎を詳しく解説【ネタバレ②】

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【岩木一麻著書】がん消滅の罠「このミステリーがすごい!」大賞

がん消滅の罠

こんにちは、Michiです。書籍レポの続きです。

1つ前の記事で、がんが突然消滅した若い双子女性のトリックについて解説しました。一人目の謎はただの序章(プロローグ)。この本のつかみ程度に出てきただけです。

面白いのは、二人目からですので、ここからはゆっくり詳しく解説していきますよ。一応、医療資格をもった元研究者ですからね(笑)

この先は、完全ネタバレです。興味がある人はこの先は読まず、ぜひ本を手にしてください!

【こんな方におすすめ】医療従事者/医学の道を志す学生/自身や家族ががんを患っている方/ミステリー好きの方

 

 

では、ここから先はネタバレOKの方のみどうぞ。

【謎のがん患者②】生命保険の生前給付を受け取った後に、奇跡の寛解!?

子持ち女性

二人目の謎の患者は、またしても女性です。

しかし今度の女性は、双子ではありません。幼い子供を育てるシングルマザーで、子供は障害をもっており、母は肺がんというまさに困窮した状況にある女性です。

こちらの女性、子供の障害の治療のために通っている病院で、ある女性に声をかけられます。

アレルギー性鼻炎ではないですか?

どうやら、彼女鼻をすすっているのを見て、気になった女性が親切に声をかけてくれたようです。

(実はこの彼女の子供が通っていた病院というのが、何ともいわくつきの病院なわけですが・・・その理由まではここで明かさないようにします。)

彼女は、声をかけてきた女性に促され、その病院でアレルギーの検査をうけました。すると、ひどいアレルギー性鼻炎ということで、薬を投与してもらうことになったのです。

この薬の投与をうけると、彼女のアレルギー性鼻炎の症状はすっかり良くなりました。それもそのはず、この女性は非常に強力な免疫抑制剤を投与されていたのです。

免疫抑制剤とは、移植手術や、リウマチ・腸炎・筋無力症といった免疫が絡む重篤な症状を、治療したり予防したりするお薬です。アレルギーというのは、過剰な免疫反応による症状ですから、アレルギー性鼻炎にも免疫を抑える薬を処方することはよくあることです。しかし、使用されるのは皆さんよく知っている『ステロイド』です。それにもかかわらず、彼女は移植手術のときなどに使用されるような非常に強い免疫抑制剤を投与されており、免疫寛容状態に陥っていました。なぜ、彼女はこれほどまでに強い免疫抑制剤を投与されたのでしょうか。。。

【肺癌見つかる】生命保険に入ったとたん、肺癌に

さあ、免疫抑制剤によってすっかりアレルギー性鼻炎がよくなった彼女は、その病院の先生を懇意にしはじめます。そうして生活の相談などもする関係になりました。

先ほども書きましたが、彼女は障害をもつ子供を育てるシングルマザー。彼女の生活相談を受けた先生は、彼女にこんなアドバイスをします。

あなたにもしものことがあったら、子供の将来が心配でしょう。生命保険は入っておいた方が良いよ。どの保険か迷うだろうから、○○会社のリビングニーズ特約がついた保険がいいわ。

何も知らない彼女は、絶対的な信頼を寄せる先生から勧められるままに、“リビングニーズ特約”がついた生命保険に加入したのです。しかも掛け金はなんと生前の受取ではマックスの3000万円という大金でした。事前の健康診断では、彼女は健康に全く問題はなく、すんなりと加入することができました。

リビングニーズ特約とは、余命宣告を受けたら、生命保険を生前受給できるというものです。この特約は、現実に売られている生命保険の特約です。みなさんもはいることはできますよ。

 

さて、そのリビングニーズ特約つきの生命保険に入ってしばらくたった頃、彼女は例の病院で健康診断をうけることになりました。何てことはない、定期健診のようなものでした。

しかし、この検査で肺に影が見つかったのです。

診断の結果は、肺癌でした。しかも多発肺転移といって、肺のいたるところにがん細胞が飛び散っているもので、放射線などでは治療できない状態であることが分かりました。

そうなると、この病院では治療はできないということになり、別の病院を紹介されました。その病院こそが、この本の主人公のがん専門医師がいる大きながんセンターなのです。

 

【主人公医師との出会い】がんセンターでの検査や治療内容

紹介後、まもなく彼女は、がんセンターで詳細検査を受けました。

するとどうでしょう。彼女のがんは肺だけでなく肝臓にも転移していました。主人公の医師は、他の複数の専門医と協議した結果、「余命3か月」という診断を下しました。

呆然となる彼女でしたが、幸いにも彼女は生命保険、しかもリビングニーズ特約付きのものに加入していたではありませんか。

早速その診断書を保険会社に提出し、なんと3000万円もの大金を手にすることができました。シングルマザーで、しかも子供も自分も病気を患っているのですから・・・3000万円は彼女にとって、唯一の救いとなりました。

これでなんとか治療を受けて、少しでも長く生きたい。

自分にもしものことがあっても、子供にお金を残してあげられる。

余命3か月の宣告を受けた彼女でしたが、抗がん剤の治験に参加することに決めたのでした。

治験とは、まだ承認されていない薬を試しに投与してみるというものです。製薬会社や医師が主導して行う研究の1つです。夢の新薬になるかもしれないし、全く効果がないどころか副作用が出るかもしれない・・・通常の治験ではそれほど危険はありませんが、抗がん剤の場合は、効かなければ刻一刻とがんが進行してしまいますし、副作用で命を落とす可能性もあります。まさに賭けのようなものでもあります。しかし、治験は製薬会社が治療代を全額負担してくれたり、通常より詳細な検査を受けることができるというメリットもあります。

治験という“賭け”に出た彼女に、まさかの軌跡が起こりました。

なんと、彼女の癌は治療を開始してしばらくすると、きれいさっぱり消え去ったのです。

肺はもちろん、転移していた肝臓も、それはそれは綺麗に消え去って、まさに『完全寛解』となり、元気に退院していったのでした。

医師も、彼女も、驚きました。しかし、この段階ではミステリーではなく、『夢の新薬』の誕生に驚いたと言えるでしょう。すごい薬だ!という驚きです。

 

【保険会社の調査】加入後にがん発覚。怪しむ保険会社と医師はどうした?

さて、もう一人驚いた集団がいました。それは保険会社です。

というのも、シングルマザーがなぜかものすごく高額の“リビングニーズ特約付き”生命保険に入り、そのときは何も異常がなかったのに、突然末期がんがみつかった。

これだけでも十分、保険会社としては怪しむところですが・・・がんセンターの複数の医師が「間違いなく“余命3か月”だ」と宣言すれば、それは信じるしかありません。

加入前の検査もきちんとした病院で行われています。全て科学的な証拠があり、どこにも粗を見つけることができなかったのです。そこで3000万円という高額な保険金を支払ったわけですが・・・その彼女が“完全寛解”となると、疑惑はさらに深まります。

 

保険会社は、彼女の自宅を訪ねたり、再度病院を訪問して医師への聴取をおこないました。

しかし、やはりおかしな点はありません。ただただ奇跡が起きたとしか言えない出来事が起こったと納得するしかないのでした。

 

しかし。

主人公の医師だけはあきらめませんでした。

なぜなら、彼女は末期がんです。基本的に抗がん剤というのは進行をやや抑えることができるものにすぎません。たとえ新薬といえども、その作用機序(効能)はこれまでの抗がん剤とそれほどかわらないことを、彼は医師として把握していました。

すなわち余命を少し延長できることはあっても、末期がんを完全寛解させるような効果はなかったはずなのです。

主人公の医師は、自問自答を繰り返します。

『奇跡が起こったのかも・・・』

「いや、そんな奇跡は残念ながら起こらない。それくらい彼女のがんは難しいものだった。」

『なぜだ・・・』

 

【がん完全寛解の罠】2人目の患者のトリックとは

主人公の医師は、あらゆるルートをたどって情報収集し、ついにそのトリックを見破りました。

なんと、その結末は信じられないものでした。

鍵を握るのは、彼女の肺癌を最初に指摘した、例の病院です。アレルギー鼻炎の治療のために、強力な免疫抑制剤を投与した、あの病院に秘密があったのです。

先ほども説明しましたが、彼女はあの病院の治療で、他人の細胞を移植しても拒絶反応が起こらないくらいにの“免疫寛容状態”になっていました。

そんな免疫寛容状態の彼女に、あの病院の医師は何を移植したのか・・・

他人のガン細胞です。

いや、そんな馬鹿なと思うかもしれませんが、実際に現在の科学技術はもうこれらのことを可能にしてしまっています。

というのも、癌かもしれないといわれたときに、多くの方は『生検』をしませんでしたか?手術や内視鏡でがん細胞の一部を摘出し、その組織を顕微鏡で検査することです。実はこの取り出したガン細胞を試験管内で増やせるような細胞に変化させる(これを“株化”といいます)技術も既にあります。

さらには、試験管内で増やしたがん細胞を、血液を介して人体に注入するというに技術も確立されています。なぜなら既に「細胞治療」という治療法が行われているからです。

細胞治療とは、iPS細胞などからつくった健康な細胞を病気の人に注入して治療するというものです。がん民間療法では、ごくごく一般的に行われていますよね。患者から取り出したT細胞にがんを識別するフラグのようなものを付けて体内に戻し、その細胞にがんを特異的に攻撃させるといった治療法が生み出されています。

参考:【がん免疫の新薬】小児白血病を適応とした新しいがん免疫薬「キムリア」が米FDAで承認!なんと1回の治療費が5000万円以上!

 

つまり彼女は、保険に加入した時も、そのあとも全くがん細胞なんて体内で生まれていなかったのです。ただ他人のがん細胞を注入され、それらが血液を介して肺や肝臓にいき、そこで病巣をつくってしまっていたということです。

通常、他人の細胞が組織に宿ることはありませんが、彼女は移植手術を行う前とおなじような免疫寛容状態にされていました。そのため拒絶反応はおこらず、他人のがん細胞が見事彼女の体内に移植され定着してしまったということです。

血管を介してがん細胞が至る所に飛び散るわけですから、当然がんは特定の組織だけではなく多発転移の状態になっており、診断としては「末期がん」ということになります。余命もそう長くはないものになるでしょう。

 

では、最後に彼女のがんは、なぜ新薬の治験に参加したとたん消えてしまったのでしょうか。

これは、簡単なトリックです。彼女のがんは新薬でやっつけられたわけではありません。

もともと私たちの体には免疫機構があります。通常であれば、他人の細胞は免疫機構が攻撃し消されてしまいます。これが拒絶反応というものですね。

彼女はがん治療を始めると同時に、免疫抑制剤の投与をやめたのです。すると、免疫細胞の活動が活発になり(抑制されていた状態から、元の状態に戻っただけですが)、彼女の肺や肝臓に居ついた他人のガン細胞を次々排除されていったということです。

そうして、自然にがん細胞は消えてしまったのです。

この一連の行為は実は彼女自身も全く知らなかったことです。つまり保険金詐欺事件ではないということが、この本のミステリー性の高さです。全ては例の怪しい病院が勝手にしたことでした。

なぜそんなことをしたのか?

それは、ここでは明かさないでおこうと思います。興味のあるかたはぜひ読んでみてください。

【こんな方におすすめ】医療従事者/医学の道を志す学生/自身や家族ががんを患っている方/ミステリー好きの方

 

それにしても、2人目はなかなか複雑なトリックでしたね。最後の3人目のがん寛解の謎についても、こちらの記事で解説したいと思います。

 

またまた余談ですが・・・

この2人目のトリックのポイントは、“免疫”です。

免疫によるガン細胞の消滅というと・・・今話題のオプジーボ(ニボルマブ)などの、免疫チェックポイント阻害剤を思わせるものがあります。

免疫チェックポイント阻害剤も、すべての人に効果があるわけはないですが、20%程度の確率で腫瘍の縮小がみられます。さらに、ごくごくわずかではありますが、がん細胞が完全に消えてしまう人もいます。まさに完全寛解です。

今回は、免疫寛容状態でのがん細胞の移植ということで、自然発生したがんの治療とは異なります。しかし免疫によるがん細胞の消滅という点は同じです。おそらくオプジーボなどの抗ガン剤をヒントにこのトリックは考え出されたのかな、と思いました。最先端の医学を取り入れた、よく考えられたトリックで、面白いです。

3人目のがん寛解の謎については、こちら

 

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