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【がん免疫】小児白血病「キムリア」が米FDAで承認!1回5000万円!効果は?

投稿日:2017-08-31 更新日:

【キムリア】アメリカFDAに承認された「がん免疫薬」とは?

キムリア

こんにちは、Michiです。今日は医学(がん)レポです。

21世紀のがん治療において、「がん免疫薬」の登場は大きな出来事といえます。

これまで、小野薬品のオプジーボ(ニボルマブ)、ブリストル・マイヤーズ(米製薬)のヤーボイ(イピリムマブ)、そしてメルク(米製薬)のキイトルーダ(ペムブロリズマブ)と、3薬が登場しています。

このうち、オプジーボとキイトルーダは、PD-1という免疫防御システムを阻害して免疫を亢進させる機序のお薬です。

ヤーボイは、CTLA-4という免疫防御システムを阻害して免疫を亢進させる機序のお薬です。

これらの「PD-1」や「CTLAA-4」は人間の体内にあるT細胞に発現している膜蛋白なので、上記3つの薬品は、T細胞の働きを活性化させるという点では共通しています。

今回新たに承認された「キムリア」は上記2つの機序とは異なる機序で、免疫を強化させるがん免疫薬ということです。現在の適応症や、治療費、効果などについて詳しくレポートしたいと思います。

 

【キムリア(Kymriah)】作用機序、適応、副作用など

ノバルティス

まず「キムリア」は、ノバルティス(スイス製薬)が製造販売している薬です。日本ではそれほど馴染みがないかもしれませんが、ノバルティスは世界1、2位を争う超巨大メーカーです。

日本の小野薬品などとは比べ物にならない圧倒的な規模で営業力をかけてきますから、今後適応が広がっていくと、大きくシェアをのばす可能性もあると思います。

 

「キムリア」の作用機序

「キムリア」は、これまで承認されているがん免疫薬のような抗体薬ではなく、細胞治療といったたぐいのものになります。

がん患者さんのT細胞をいったん取り出して、そのT細胞を試験管内で培養・増殖させます。そして、増やしたT細胞にがん細胞を識別するように遺伝子改変を行います。

その後、体内にその遺伝子改変T細胞を戻し、T細胞にがん細胞を素早く見つけさせ、がん細胞をやっつけさせるという治療法です。

T細胞にがん細胞をやっつけさせるという点では、これまでの「がん免疫薬」と同じですね。

 

オプジーボ、キイトルーダやヤーボイなどの免疫チェックポイント阻害剤との違い

免疫チェックポイント阻害剤では、全身のT細胞を活性化させてがん細胞をやっつけさせていました。そのため、免疫関連の副作用があらゆる臓器で発現してしまう傾向にありました。

また自己免疫疾患をもっている人では、症状が悪化する可能性もあり、使用がむずかしいといった点も問題でした。

→オプジーボやヤーボイ、キトルーダの免疫関連性副作用については、こちらの記事

 

一方「キムリア」は、T細胞を活性化させるというよりは、特定のがん細胞を「見つけやすくする」という機序なので、どちらかというと分子標的薬のような傾向をもちます。

しかし、分子標的薬との違いは、運び屋さんにがん細胞をやっつけるための抗体を癌細胞まで届けさせるのではなく、T運び屋そのものをT細胞が担い、がん細胞に届いた瞬間T細胞自身が癌細胞をやっつけるというしくみです。

すなわち、分子標的薬とがん免疫療法の両方の良いところを合わせたようなお薬と言えます。

 

現在承認されている適応と今後の見通しは?

現在「キムリア」は、小児白血病の治療薬として米FDAに承認されました。なんとその効果は、8割以上でがんが縮小したとのことです。

現在、ノバルティスは日本でも臨床試験を実施中ではあるようですが、まだ申請にはいたっておらず、当分日本で承認されるということはなさそうです。

それなら日本で治療を受けるなら自費か・・・となりますが、とてもじゃないですが自費でキムリアの治療を受けるのは難しいでしょう。

というのも、キムリアには、1回の治療で「5200万円」という超高額な薬価が設定されました。

つまり日本で保険適応外で、この「キムリア」の治療を受けようとすると、5200万円以上必要になります。

 

なぜこれほど薬価が高いのか。

これは、適応が「小児白血病」というごくごく限られた適応だからこそついた薬価だと考えられます。

オプジーボのときも、メラノーマというごく限られた適応だからこそ、年間3000万近い薬価が最初はつきました。

しかし適応が拡大されて、肺がんというものすごく患者さんが多い疾患に使用できるようになったとたん、日本の財政破綻を引き起こしかねない事態となり、すぐに薬価改定が行われましたよね。(なんと、薬価が半額に・・・)

 

そんなことからも、この超高額な薬価がついた「キムリア」が、この先日本で承認されるのか、また適応拡大がされるのかは・・・なかなか財政面も含めて難しい問題があるのではないかと思います。

 

しかし、この「キムリア」と同じ作用機序の薬剤を、日本の製薬メーカーである「第一三共」が、海外メーカーと提携して開発をすすめています。

高額であることはもちろん変わりないでしょうが、競合品が増え、適応が拡大すれば薬価はさがります。ぜひ財政の問題よりも人名救助が優先され、必要な方々に薬が届く日が来るとよいですね。

 

「キムリア」で想定される副作用

最後に、「キムリア」で想定される副作用についてお話したいと思います。

日本での承認がまだのため、添付文書はございません。つまり日本人における副作用情報などは、全く確認できない状況です。

そこで日本の添付文書に相当するFDA(米国)の「package insert」を確認しました。

キムリア②

 

画像は、日本の添付文書の「警告」に当たる部分を拡大表記しています。

下記におおよその日本語訳を載せておきます。

・キムリアによって、死亡または生命を脅かすような反応である「サイトカイン・リリース・シンドローム」が起こる可能性があります。

・キムリアによって、生命を脅かすような神経毒性を引き起こすことがあります。

・キムリア治療は、リスク評価・リスク軽減戦略「REMS(レムズ)」に準じてのみ受けることができます。

まず、最も心配なのはT細胞由来の副作用「CRS:Cytokine Release Syndrome」ですね。

T細胞は活性化されると大量のサイトカインを放出します。つまりどんなにがん細胞だけをみつけるような遺伝子改変をおこなったとしても、がん細胞にたどりついてT細胞が活性化されると、大量のサイトカインが血液中に放出されることになります。

このサイトカインは、さらに他のサイトカインの分泌を誘導したりとカスケード(連続)式に全身の炎症反応を活性化させてしまいます。

その結果、全身で非特異的な強い炎症反応が引き起こされかねません。

実際にがん免疫療法では、このようなサイトカイン・リリース・シンドローム(サイトカイン放出症候群)と呼ばれる副作用が多く報告されており、要注意です。

キムリアでは、なんと79%(54例/68例)もの頻度でCRSが認められており、うち5例が死亡症例tなってしまっています。非常に高いリスクだと考えられます。

 

続いて2つ目の「神経毒性」についても、CRSが引き金となっているとの考察でした。神経毒性の主な症状は、頭痛、せん妄(意識混濁や発狂など)、脳症(脳梗塞などの脳機能障害)などだそうです。

こちらも、49例/68例(72%)と高確率で認められていることがわかります。

 

最後に「REMS(レムズ)」について少し触れておきます。

REMSとは、米FDAが、販売すぐの新薬はもちろん、すでに市販された後の市販後薬にでも、副作用によるリスクを最小限にするために実施命令を下すことができる管理システムのことです。

通常、薬は医師の診察と患者の同意にて処方されますが、REMS指定された医薬品は製薬メーカーによって「リスク評価のタイムテーブル」、「安全使用の保証方法」、「患者への説明書」などが作成されており、その管理下でしか使用が認められません。

キムリアもこのREMS指定医薬品となります。

 

※なお、キムリアのpackage insertの全文(英語)はこちら

 

【まとめ】がん免疫の新薬「キムリア」

現時点では米FDAでのみ承認されている「キムリア」ですが、新たな「ガン免疫薬」として注目されています。

適応は小児白血病で、1回の治療費は5000万円超えとなっています。効果は非常に高く8割以上の症例で完治しているとのことです。

一方、副作用には「CRS」といって生命にかかわる重篤なものが高頻度で起こっており、現在治験実施中の日本では承認されるかどうか微妙な状況でしょう。

今後もがん免疫の分野では、続々と新薬開発が進められています。また、既存のがん免疫薬の適応拡大もすすむ予定です。新たな情報が出次第、情報提供したいと思います。

 

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