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ビジネス

【研究者の将来に夢なし】私が製薬会社の研究職を辞めた理由

投稿日:2018-12-05 更新日:

【日本の研究者の実情】アカデミアも企業研究員も先行き暗し

こんにちは、Michiyoです。

今日はビジネスレポです。

私も研究者の一端として大学時代、会社員時代を過ごしましたので、今月のダイヤモンド『日本人はもうノーベル賞を獲れない』は少し寂しく思いつつも、大きく頷きながら読みました。

というのも、私自身、多くの人が一度は耳にしたことがある大手企業の研究職として社会人をスタートさせたにもかかわらず、5年でその生活を捨てた理由が、ここに書かれていること、そのものだったからです。

製薬会社の研究職というと、本当に狭き門で、大手製薬ならなおさら・・・何万人に1人しか内定をもらえないとも言われている世界です。

それなのに、私のようにあっさりと辞めていく人が少なくありません。

とくに若いうち(入社10年以内)に辞める人が目立ちました。

むしろベテラン社員は、リストラ候補に挙がっても必死でしがみつく人が目立ちます。それくらい恵まれた待遇ということですね。

そんな待遇をすてて、私が大手製薬会社の研究職をあっさり5年で辞めた理由を吐き出しながら、今日はダイヤモンドの記事『日本人はもうノーベル賞を獲れない』について、掘り下げていきたいと思います。

【国内企業の研究開発費】製薬業界はどの位置か?

まず、私がいた製薬業界はもちろん、日本の企業の研究開発費がどの程度なのか、ということを見ていきたいと思います。

その前に、ご存知の方も多いと思いますが世界の研究開発事情をみてみましょう。

世界でものすごい巨額の研究開発費を注いでいる会社は、米国の『アルファベット(Google)』『Amazon.com』『Facebook』『アップル』といったIT企業です。

次に、中国企業『アリババ』などが割り込みます。

日本企業の中で、最も高額な研究開発費を投じているのが、自動車メーカーの『TOYOTA』です。2位以降も自動車メーカー『ホンダ』『日産』が続きます。

自動車メーカーの後にくるのが、4位『ソニー』5位『パナソニック』・・・といった電機機器メーカーです。

これらの上位企業の研究開発費のうち、今多くをしめているのがAI関連の研究・開発費であることは間違いないでしょう。

では、科学分野の研究開発費が多くを占める製薬会社はどの位置なのでしょうか?

国内最高8位にランクインしているのが、国内最大手の『武田薬品工業』です。続いて11位に『第一三共』、12位に『アステラス製薬』と続きます。

いずれも国内大手製薬メーカーですが、これまでの自動車・電気メーカーとは大きく数字が異なっている気になるポイントがあります。

それが、売上高に占める研究開発費の割合です。

『TOYOTA』がたった3.9%、他のメーカーも5%前後と一桁なのに対し、

『武田薬品』18.8%

『第一三共』24.7%

『アステラス製薬』16.8%

『エーザイ(20位)』25.9%

製薬会社の研究開発費が、企業経営をどれだけ圧迫しているかがわかりますよね。

製薬会社は新薬を出したり新しい効能・効果を追加したり、市場(国)開拓しないと売り上げが伸びません。

特許はたった10年で切れてしまうのです。特許が切れるとジェネリック(後発)会社が一斉に同じ成分の薬を発売します。

国のジェネリック推奨もあり、そのシェアはどんどん拡大していきます。

先発メーカーが生き残るには、何としても新薬を世に送り出すしかないのです。しかし、そのために莫大な研究開発費がかかります。

もちろん、研究開発費をかけたからといって芽が出る世界ではないです。それだけ市場は成熟してしまっています。重箱の隅をつつくような薬を開発するための研究が増えるのも無理はありません。

そこに薬価改定など、製薬業界には大きな逆風が吹いていますので、今や大手ですら安泰ではなく常に統合閉鎖でリストラにおびえながらといった状況であることは、このランキング表をみただけでも、容易に想像がつきますね。

【内資製薬会社の研究力】大手衰退の理由は?

それでも、大手製薬の研究職は恵まれているだろうと思われるのではないでしょうか。

ここからは、大手・準大手(中堅)を合わせた国内製薬会社の研究力という点で見ていきたいと思います。

このグラフは、国内の主要な製薬メーカーの論文数の数位です。

なんと、断トツの1位を堅持しているのは、大手製薬会社のいずれかではなく、関西に本社をおく中堅『塩野義製薬』です。

さらに『協和発酵キリン』『大日本住友製薬』と中堅が続きます。

先ほど、国内上位の研究開発費を投じていると紹介した『武田薬品』『第一三共』『アステラス』は見事に下位3社となっています。

論文数を一概に「研究力」とみなすことはできませんが、論文として発表・掲載するような科学的に一定の成果を出す研究は、大手ではあまりおこなわれていないことが分かるかと思います。

製薬会社の「研究開発費」は、大きく「研究費」と「開発費」に分かれます。

実際に大手製薬メーカーでは「研究職」と「開発職」としてしっかりと職種が分かれています。

私が所属していたのは「研究職」です。

「研究職」は、化学や生物学などの知識をもとに、薬の種を見つけ、効果や安全性を確認して原薬まで育てるプロセスになります。

0から1を見つける過程です。そのため、研究による成果を論文として発表する機会も多いのが特徴です。

一方、「開発職」は研究により育てられた原薬を、治験(臨床試験)にすすめて、人での安全性や効果を確認するプロセスです。

研究費と開発費では、圧倒的に「開発費」の方が高額です。治験の規模にもよりますが、1試験実施するのに億単位のお金が動くのはめずらしくありません。

つまり、今大手製薬会社がお金を投じているのは、ベンチャー企業を買収して薬の種(あるいはほぼ原薬に近いところまで育ったもの)を手に入れて、自社で開発するというプロセスなのです。

大手製薬会社の研究所が、どんどん統合されたり、閉鎖されたりしている理由がここにありますね。加えて、必要な研究も外注化することも増えています。

【製薬会社研究員の使命とは】私が大手製薬会社の研究員をやめた理由

もちろん、私も製薬会社研究職に5年間在籍し、研究にも従事してきました。

開発ばかりにお金を投じているといっても、自社で全く研究をしないというわけではありません。

また外注するといっても、研究という実務そのものを外注するだけで、研究計画を立案し計画書を作成したり、結果を考察したりといったことは、当然自分たちでおこないます。

実際に手を動かす(よくイメージするビーカーをもって白衣をきて作業をする)といったことは減っても、薬の種をさがしたり、見つけた種を育てることに従事するのが製薬会社の研究職の醍醐味です。

非常にやりがいのある職務だと思います。そう思わなければ、就職していません。

しかし、どんなに論文を読み漁り、学会で情報収集し、同僚と議論し、これこそはという研究計画を提案しても全くといっていいほど認められませんでした。

もっともっとやれば違ったかもしれません。しかし、研究提案に対して返ってくる答えがいつもこうだったのです。

というより、選ばれる研究にはある特徴がありました。役員本部もはっきりと選ぶ基準を認めました。

その理由というのが、

「短期間(2,3年)で一定の成果が出そうなものだったから」だそうです。

製薬会社の研究というものは、10年やっても1つも芽が出ない(薬につながらない)かもしれない世界だということをよく耳にしませんか?私もそうきいて入社しましたし、実際にそういう実感があります。

しかし、今はそんな余裕はどこにもないのです。2,3年で論文〇報、国際学会で発表できる成果になるか、というような視点で本部が提案を選別しているというのが現実でした。

もっと言えば、その2,3年で得られた成果がどれくらいのお金になるか(対象疾患の患者規模、開発のしやすさ)なども非常に重要になってきます。

稀少疾患への取り組みは、嫌な言い方をすれば各社の「プロパガンダ」のようなものです。

アフリカ地域の感染症が「顧みられない熱帯病」と呼ばれる理由もこのあたりの理由からです。薬ができても容易に売れなければ意味がないので、どの会社も取り組まなかった(顧みなかった)ということですね。

私たち研究員は、その疾患を治す薬を研究したいという熱意や興味より、国際社会のニーズより、もっと考えないといけないことがあったのです。いかに早く成果を出せるかというアピールポイントを元に、研究テーマをさがさないといけなかったのです。

企業の研究員として、お給料をもらう以上、それが当たり前ですが、私は「つまらない」と感じましたし、「日本の研究力は衰退するだろう」と感じました。

そうして、5年はあがきましたが、ついに製薬業界から離れることに決めました。

自由な研究がしたいなら、アカデミアなどで研究者としてやっていけばいいだろうという意見もよく耳にします。その道も考えました。博士課程に進んで、もう一度とも。

しかし、国内の研究開発費の8割は企業の研究費です。資金力のある大手がこのような余裕のない状況で、アカデミアは本当に自由に研究ができる環境なのでしょうか?

大学研究室の資金は、企業との共同研究や、国からの予算などです。

この記事にも、以下のようなことが書かれていました。

「国が指定した重点領域だから予算がとれる」

などという理由で研究をするのではノーベル賞はとれない。

いや、そもそも受賞するために研究はあるのではない。

五感をつかって「わからないことを知りたい」という欲求を育てていくことが、大きな研究につながるのではないでしょうか。

そんなこんなで、研究と言う世界からも私は離れました。

もちろん、私が見てきたのは医学分野の研究についてのみです。日本国内でも、将来のノーベル賞につながるような研究ができる機関もあるかもしれません。

また、研究者といっても生活するためのお金は必要です。待遇面でいえば、大手と中堅(ましてやベンチャー)では大きな差があります。

さらに、資金力のある大手企業でしかできない先端研究というものもあります。

大手製薬の研究職にという志をもった方は、ぜひがんばってください!

それぞれの考え方次第だとは思いますので、一意見として読んでいただけると幸いです。

【日本の研究がピンチ】もうノーベル賞は出ない!?

最後に、2015年にノーベル生理学・医学賞を受賞された、大隈良典さんのお言葉を紹介します。

「研究世界で遊んでいるだけ」と批判もあった。

科学研究は失敗の連続であり、失敗の連続から見えてくるものこそ成果です。

(もちろんこの時点での『成果』は一銭のお金にもならない)

「これは何億円の価値がある成果ですね」といった基準で考える風潮はものすごく怖い。

音楽や絵画などの芸術が社会・文化に不可欠なものとして確立されているが、科学研究は文化として認識されていない。

「科学は役立つものでなくてはならない」というあしき誤解が、優秀な研究者の進路を邪魔している。

優秀な研究者ほど、修士を得ると企業に就職してしまうのが、現状だ。

さらに、2018年に生理学・医学ノーベル賞を受賞された本庶佑さんのお言葉も紹介したいと思います。

「イノベーションを起こすには、ばかげた挑戦をやりやすくする環境整備をすべきだ」

ちなみに、この本庶さんの言葉にシリコンバレーで活躍したとある方は、このようにおっしゃっています。

日本企業は、ばかげた挑戦にチャレンジできる人材の育成・獲得にも取り組むべきだ。

ばかげた挑戦をすすめることができる人材は、企業の既存の価値で「優秀」と判断される人材ではない。

『夢へのこだわり・成功への執着心・創造的な発想・リスク志向・反骨精神』

を持つ人材だ。

こういった人材は、今の日本の新卒一括採用試験では、早々に除外される(エントリーシートが不適切・不完全で通過できない、(集団)面接ではコミュニケーション不足で落とされる)傾向にありますよね。

ちなみに創造力は貧乏な環境で反骨精神のもと、磨かれるというのが私の考えです。

【まとめ】

今月のダイヤモンドの内容を紹介しながら、私自身の体験や考えについても掘り下げて紹介しました。

私が、大手製薬メーカーの研究員を辞めた理由は、記事の中でも太字で協調しましたが、

・成熟した市場で重箱の隅をつつくような研究テーマしか採択されない現実

・研究ではなく開発への投資ばかりをするように役員の考えがシフトしていた現実

・研究は短期間(2,3年)で成果が出ることが要求された現実

に、5年間従事して気づいたからです。

最後に付け加えるなら、周囲は私の決断に大反対しました。ただただ「もったいない」と。

そして、この5年間は私は世間から驚くほどの信頼や尊敬を得られていました。大手の研究員と、アカデミアの研究員、中小企業の会社員の社会的信頼度は天と地ほどちがいます。

逆に言えば、辞めたとたんにそっぽ向くのが日本の社会だということです。

研究者として生きていくと決めた人は、そういったことも全部覚悟して、自分の人生を選んでみてください。

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